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特許 平成30年(行ケ)第10133号「1-[(6、7-置換―アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体」 (令和元年7月18日)

10月16日(水)配信

 

【事件概要】

 本件は、訂正審判請求を不成立とした審決が維持された事例である。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 争点は、訂正事項2の「R2 は塩素であり」を「R2 は水素であり」とする訂正は、訂正要件を満たすか否かである。

 

【結論】

 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1記載の「R2」の「塩素」を「水素」に訂正するものであるから、特許請求の範囲を変更するものである。また、本件訂正前の請求項1のR1 は「フッ素又は水素」を、R2 は「フッ素又は水素」を実質的に意味するものと理解することはできないから、訂正事項2による特許請求の範囲の変更は、減縮的な変更には当たらない。そして、訂正事項2により、請求項1に係る発明は、本件訂正前の請求項1に記載される化合物1の置換基である「R2」が塩素である化合物群から訂正後の「R2」が水素である化合物群に変更されることになるから、この変更により、本件訂正前の請求項1の記載の表示を信頼した第三者に不測の不利益を与えることになることは明らかである。したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を変更するものと認められるから、特許法126条6項の要件に適合しないというべきである。

 

【コメント】

 原告らは、本件訂正前の請求項1の「R1 はフッ素であり、R2 は塩素であり」との記載は、ただし書の「R1 及びR2 が同時に水素原子であることはない。」との関係が不明瞭であり、実質的に、本文のR1 及びR2 の範囲は、塩素だけではなく水素を含むはずであると理解され、訂正事項2は、実質的に理解されるR2 の範囲から塩素を削除することによりR2 の範囲を限定するものである旨主張したが、判決は、本件訂正前の請求項1の本文の記載は、「R1」を「フッ素」に、「R2」を「塩素」にそれぞれ特定したものであることは明らかであり、ただし書の記載と相互に矛盾するものではなく、本件明細書の記載との関係においても整合するものであるから、本文の記載とただし書の記載が不明瞭であるということはできないとして原告らの主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部寛)