〜
11月24日
12月11日(水)配信
【事件概要】
この事件は、審決を取消した原判決(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10003号判決)に対する上告受理の申立てを最高裁判所が受理した事件(上告受理事件)である。
最高裁判所は、原判決を破棄し、事件を知的財産高等裁判所に差し戻した。
▶「判決本文(最高裁判決)」を見る
【争点】
本件特許に係る発明の進歩性の有無に関し、当該発明が予測できない顕著な効果を有するか否か。
【理由】
本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということから直ちに、当業者が本件各発明の効果の程度を予測することができたということはできず、また、本件各発明の効果が化合物の医薬用途に係るものであることをも考慮すると、本件化合物と同等の効果を有する化合物ではあるが構造を異にする本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみをもって、本件各発明の効果の程度が、本件各発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであることを否定することもできないというべきである。
原審は、結局のところ、本件各発明の効果、取り分けその程度が、予測できない顕著なものであるかについて、優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討することなく、本件化合物を本件各発明に係る用途に適用することを容易に想到することができたことを前提として、本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみから直ちに、本件各発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定して本件審決を取り消したものとみるほかなく、このような原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。
【コメント】
最高裁判所は、医薬用途に係る効果に関し、化合物の「構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否か」についても検討すべきとしたので、今後の実務においてもこの点の検討を忘れないようにしておく必要がある。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住和之)
こんな記事も読まれています