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1月19日
3月25日(水)配信
本件は、本件商標権を保有する原告が、被告が本件商標(“TOWER PRO”)を付した商品を譲渡し、譲渡のために展示した行為等について、本件商標権を侵害する等主張して、販売の差止め、損害賠償等を求めた事案である(本稿では、商標権に関する判断部分のみ取り上げる)。
被告はウェブサイトを運営しており、被告ウェブサイトにおいては、被告各商品が販売のために展示され、被告各商品に係る情報として、原告商標と同一又は類似の文字列は表示されていなかった。
(元は1行目に“TOWER PRO”という文字列が印字されていたものと思われるが、被告ウェブサイトにおける写真は上記のとおり、1行目が読めない状態になっている)
原告は、被告ウェブサイトにおいて、被告各商品を注文した。被告は、在庫を抱えていなかったため、インターネット上の別個の通販サイトで、本件仕入先業者に対し、納入先を原告として、被告各商品を注文した。被告各商品は、中国から国際郵便で原告に届けられた。被告各商品には、TOWER PROの文字を含む各標章が付されていた。
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裁判所は、次のとおり述べて、被告行為は本件商標権侵害にはあたらないと判断した。
「本件仕入先業者から原告に対し直送された被告各商品に原告商標である「TOWER PRO」と同一又は類似する文字列を含む被告各標章が付されていたとしても、本件のように本件仕入先業者から被告を介することなく原告に商品を直送するような場合において、商品に標章を付す行為について着目するときには、当該行為の性質及び内容に照らせば、被告と本件仕入先業者とは別個の主体であるというべきであるから、特段の事情がない限り、上記行為は被告による行為ではなく、本件仕入先業者による行為として捉えられるものというべきである。しかして、本件において、被告と本件仕入先業者との間に、通常の取引関係を超えた緊密な関係が存在する状況にあったこと、または、被告が本件仕入先業者が発送した商品の現物を認識すべき状況にあったことなど、同人の行為を被告による行為と同視すべきことを合理的に根拠づけるような事情は何らうかがわれず、その他、本件全証拠をみても、上記の特段の事情を認めるに足りるものはない。」
本件は、売買契約の当事者自身が商標を付したのではない場合に、同当事者が商標権侵害行為をしたとはいえないという判断をした。仕入先業者と被告との共同性がおよそ認められない本件事情のもとでは、素直な結論と思われる。中国商標に基づく仕入先業者への権利行使はもちろん考えられるが、コスト等の敷居は高くなるといわざるをえない。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁護士 寺下 雄介)
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