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商標 令和元年(行ケ)第10125号審決取消請求事件(知的財産高等裁判所 令和2年2月12日)

4月22日(水)配信

 

【事件の概要】

 指定商品を「対流型石油ストーブ」とする石油ストーブの燃焼部の3つの略輪状の炎の立体的形状からなる位置商標に係る登録出願について、拒絶査定の不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟。

 

 

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 本願商標は、商標法3条1項3号及び3条2項に該当するか。

 

【裁判所の判断】

 商標法3条1項3号について、「商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,同号に該当すると解するのが相当である」との規範を示したうえで、「本願形状を採用することにより,…対流形石油ストーブの美感が向上するから,本願形状は,美感を向上するために採用された形状であると認められる」とし、本願形状に関して原告が特許出願を行っていることに言及したうえで、「本願形状は,暖房効果を高めるという機能を有するものと認められる。」と判断した。そして、結論として、「本願形状は,その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲を超えているものということはできず,本願形状からなる位置商標である本願商標は,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であると認められる。」と判断した。

 商標法3条2項について、「本願形状は,その機能又は美感上の理由から採用すると予想される範囲を超えるものではないから,本願商標は,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標というべきであるが,このような商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合は,商標法3条2項により,商標登録を受けることができる」との規範を示したうえで、原告使用商品のシェア、広告の回数、各種メディアでの原告使用商品の露出度等を考慮して、「本願商標について原告の事業に係る商品であることを認識することができるとまで認めることはできない」と判断した。

 

【コメント】

 本判決は、商標法3条1項2号の「その商品の…形状‥を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」の該当性及び商標法3条2項の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」の該当性について、規範を示し判断したものである。前者に関し、本判決が原告が特許出願を行っていることに言及したうえで、本願形状の機能性について認定している点で興味深い。本判決は、あくまで商標法は自他商品・役務識別機能を保護するものであるところ、本願形状は美感や機能性を有するにすぎないため商標法の保護対象ではない、ということを示しているものと解される。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁護士 佐藤 慧太)

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