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特許 令和元年(行ケ)第10112号「エクオール含有抽出物及びその製造方法、エクオール抽出方法、並びにエクオールを含む食品」(知的財産高等裁判所 令和2年10月21日)

1月20日(水)配信

 

【事件概要】

 この事件は、原告らが特許無効審判の請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。知的財産高等裁判所は原告の請求を棄却した。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【主な争点】

 本件訂正発明がサポート要件に違反するものであるか否か。具体的には、実施例に記載されているラクトコッカス20-92株以外のオルニチン・エクオール産生微生物が、スクリーニング方法との関係でサポートされているか否か。

 

【結論】

 …、エクオール産生能を有する微生物は、本件原出願日時点までにラクトコッカス20-92株以外にも複数発見されていたのであり、それら既知のエクオール産生能を有する微生物を対象にして、当該微生物のオルニチン産生能を検討するという方法でも、オルニチン・エクオール産生微生物を得ることができる。…。

 本件原出願日時点において、未だ発見されていないオルニチン・エクオール産生微生物について検討するに、本件明細書には、前記のとおり、段落【0036】に「公知のスクリーニング方法」によりオルニチン・エクオール産生微生物を得ることができると記載されている。そして、…、本件原出願日当時、特定の性質を有する微生物(菌)をスクリーニングにより探索する一般的な手法は技術常識になっていたものである。

 そして、一旦、エクオール産生微生物が単離・同定された後においては、同微生物を対象に、さらに、アルギニンからオルニチンへの変換能を指標としてオルニチン・エクオール産生微生物を得るができることは、…既知のエクオール産生微生物の場合と同様であり、そこに格別の困難性があるとはいえない。

 以上の検討からすると、本件原出願日時点において、未だ発見されていないオルニチン・エクオール産生微生物について、具体的なスクリーニングの方法などが実施例で開示されていないからといって、本訂正発明が、本件明細書の記載によりサポートされていないということはできない。

 …、本件訂正発明が、ラクトコッカス20-92株以外のオルニチン・エクオール産生微生物に対するスクリーニング方法との関係でもサポートされているというべきである。

 

【コメント】

 原告らは、無数に存在する腸内細菌の中から希少なエクオール産生微生物を探索するのが困難であることを培養条件の設定の困難性とともに主張したが、裁判所は、スクリーニング方法は特異なものではなく、菌株ごとに特殊な培養条件が設定されているとは認められず、そして、本件原出願前に発見されていたエクオール産生微生物には短期間で単離・同定に至っているものもあるので、「エクオール産生微生物の探索に過度の試行錯誤が必要とされるということはできない」として原告らの主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)

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