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特許 令和2年(行ケ)第10135号「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」(知的財産高等裁判所 令和4年3月7日)

5月4日(水)配信

 

【事件概要】
 この事件は、特許を一部無効とした審決の取消しを求めた事案である。
 裁判所は原告の請求を棄却した。
 ▶判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【主な争点】
 請求項2に係る「痛みの処置における鎮痛剤」を「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」(訂正事項2-2)とする訂正が新規事項を追加するものであるか否か。

 

【結論】
 本件発明2は、公知の物質である本件化合物2について鎮痛剤としての医薬用途を見出したとするいわゆる医薬用途発明であるところ、訂正事項2-2に係る本件訂正は、…鎮痛剤としての用途を具体的に特定することを求めるものである。そして、「痛みの処置における鎮痛剤」が医薬用途発明たり得るためには、当該鎮痛剤が当該痛みの処置において有効であることが当然に求められるのであるから、訂正事項2-2に係る本件訂正が新規事項の追加に当たらないというためには、本件化合物2が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤として「効果を奏すること」が、当業者によって、本件出願日当時の技術常識も考慮して、本件明細書(本件訂正前の特許請求の範囲を含む。以下同じ。)又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項として存在しなければならないことになる。
 …、本件明細書には、術後疼痛試験に関し、本件化合物2が熱痛覚過敏及び接触異痛の痛みに対して効果を奏した旨の記載があるが、この部分にも、本件化合物2が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置において効果を奏する旨の記載はない。
 …、本件化合物2が「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置に効果を奏することが本件明細書又は図面に記載されているに等しいと理解したといえるものと認めるに足りる的確な証拠はない。
 以上のとおりであるから、訂正事項2-2に係る本件訂正が願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということはできない。

 

【コメント】
 原告は、「新規事項の追加に当たるか否かの判断においては、訂正事項が当業者によって明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるか否かが検討されれば足りる」旨主張したが、裁判所は、「本件発明2の内容及び訂正事項2-2の内容に照らせば、本件化合物2が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置に「効果を奏すること」が本件明細書又は図面の記載から導かれなければ」、「本件明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるとはいえない」として原告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)

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