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11月24日
8月17日(水)配信
【事件概要】
この事件は、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした審決の取消しを求める事案である。
知的財産高等裁判所は請求を棄却した。
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【争点】
本願補正発明が引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か。
【結論】
引用発明は、その構成から明らかなとおり、光変換層内に複数の緑色発光半導体ナノ結晶及び赤色発光半導体ナノ結晶(量子ドット材料)を含むものであるところ、周知文献2の段落【0033】には、量子ドット材料の濃度を大幅に低下させることができると、ディスプレイの製作費用も量子ドット材料の数の減少に比例して大幅に減少させることができる旨の記載がある。そして、一般に、低コスト化は、多くの技術分野に共通する技術的課題であるところ、量子ドット材料の濃度を減少させることにより低コスト化を図れるのであれば、当業者としては、できる限り量子ドット材料の濃度を減少させるよう動機付けられるのが通常である。
ここで、引用発明の内容からも明らかなとおり、量子ドット材料は、光変換層内にあって、LED光源から入射される青色光を緑色光又は赤色光に波長変換するものであるところ、光変換層内の量子ドット材料の濃度を減少させつつ減少前と同等の波長変換を実現するために、量子ドット材料の波長変換の効率を高める必要があることは、当業者にとって自明の事柄である。そうすると、引用発明においてコストの低下を追求する当業者にとっては、量子ドット材料の波長変換の促進のため散乱剤を添加するとの本件技術を適用する動機付けが十分にあると認めるのが相当である。
【コメント】
原告は、「引用文献には、当業者において低コスト化を図るために量子ドット材料の使用量を少なくしつつ十分に波長変換がされるようにしようとする旨の示唆等は全くない」と主張したが、裁判所は、「低コスト化が多くの技術分野に共通する技術的課題であることは、引用文献を始めとする刊行物等に明示の記載や示唆がなくても自明のこととして認められる事柄である」として原告の主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)
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