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特許 令和4年(行ケ)第10082号「PIVKA-IIに関する抗体およびその使用」(知的財産高等裁判所 令和6年1月16日)

5月8日(水)配信

 

【事件概要】
 無効審判において新規性や29条の2の観点で特許性ありと判断した審決を知財高裁が支持した事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 本件訂正発明3の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」という特定により、引用発明(甲4)や拡大先願(甲11)との区別ができるのか。

(訂正後の請求項3)
 プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)

 

【結論】
3 本件訂正発明3の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」の意義について
 ・・・以上によれば、本件審決において、「その抗体の一つ(第2の抗体、すなわち訂正後の請求項3に係る結合性タンパク質)は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応し、反応後(結合後)は、脱炭酸されていない通常のアミノ酸1-13、すなわち、プロトロンビンのアミノ酸1-13により、置換されない特性を有し、」「PIVKA-IIを特異的に認識し、結合することができるものであることが理解できる。」とした認定(審決書84頁)に誤りはなく、・・・
4 取消事由1(本件訂正発明3の甲4-1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り)について
 ・・・甲4は、抗体H-11について、「抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されたプロトロンビンであっても、脱カルボキシル化されたPIVKA-IIであっても、認識し、結合する」ことを開示するにとどまる。・・・抗体H-11のプロトロンビン及びPIVKA-IIに対する反応性に変化があることは、甲4の開示から当業者が認識できるものではない。・・・
6 取消事由3(本件各訂正発明と甲11発明との同一性(拡大先願との同一性)に関する判断の誤り)について
 ・・・甲11の記載によれば、甲11-1発明にある「モノクローナル抗体P-16」は、「受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体」であるところ(後記第4「文献の記載」3(2)カ、キ、ク)、当該抗体は本件訂正発明3から明示的に除かれている。

(技術解説)
 正常なプロトロンビンは、10個のグルタミン酸残基がカルボキシ化されて、γ-カルボキシグルタミン酸(Gla(γ))になっている。
 一方、肝癌患者において検出されるプロトロンビンの変異体であるPIVKA-IIは、10個のグルタミン酸残基のうちの1~10個がカルボキシル化されずにグルタミン酸(Glu(E))のままになっている。

 

【コメント】
 甲4に記載された抗体H-11が、①抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されたプロトロンビンよりも②脱カルボキシル化されたPIVKA-IIに対する親和性のほうが高いことは、甲4の開示から当業者が認識できないと判断された。
 すなわち、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」という特定により、本件訂正発明3は、正常プロトロンビンよりもその変異体であるPIVKA-IIに対してより高い親和性を有する抗体であるとクレーム解釈された。
 なお、2023年10月19日に開催されたJSIP(国際知財司法シンポジウム)における抗体医薬に関する事例の[設問7]においても似たような争点が取り扱われている。
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/seminar/document/chizaishihou-2023/5-03.pdf

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村 明照)

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