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12月8日
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10月31日(木)配信
知財教育をサポートする取り組みで、大学生の活動が脚光を浴びている。既報のように10月2日~4日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「2024知財・情報フェア&コンファレンス」が開催されたが、最新のソリューションをPRする企業らの出展ブースに交じり、ひと際若い出展者たちが自らの取り組みを紹介しているブースがあった。
この出展ブースを運営していたのは、大分県立芸術文化短期大学情報コミュニケーション学科野田研究室の学生たちだ。ゼミの活動を通じて自らが作成した知財に関する啓発動画を企業の社員研修や中高生の知財教育に役立ててもらおうとアピールしていた。
学生たちが紹介していたのは、特許権や意匠権などの産業財産権について解説する動画「【情報I】お姉ちゃん教えて!産業財産権ってなに!?」と、著作権侵害について啓発する動画「著作権のうた(COVER)/めんみ」の2本だ。
産業財産権に関する方の動画では、新製品のアイディアを思いついた女子高生に対して特許事務所に勤める姉が意匠権や商標権について説明し、権利化という選択肢があることを教える。特許権や実用新案権にも言及しながら、「ビジネスを行う際はアイディアがすでに権利化されていないかを調査する必要がある」として、J-PlatPatなどの調査ツールがあることを伝えるといった内容だ。
登場する女子高生「星野夜めま」と姉の「星野夜るな」は、いずれも学生たちのアイディアから生まれた野田ゼミ公式キャラクターだ。キャラクターを活用することには、若年層にメッセージが伝わりやすい、学生たちが自主的に創作活動に取り組める、といった利点があるという。
学生たちは、シナリオ作成やキャラクターデザイン、セリフ作成、ラフデザイン、画面割りといった多くの工程を全学年での合同ディスカッションを重ねてアイディアを出し合い、作り上げていった。声のアテレコや動画制作などの仕上げの部分は動画制作会社に委託した。学生たちにとって、そのすべての工程が「とても楽しかった」という。
この動画は当初、2022年度からの新学習指導要領で「情報Ⅰ」が高校で必修化されたことを受け、その学習に役立ててもらうためにつくられたものだった。同ゼミで学生を指導する野田佳邦准教授は、「もともとは中高生向けに公開したコンテンツなのだが、各方面から企業向けにも使えるのではないかとの声があり、たとえば知財部の方が社内向けセミナーを行うときに導入部で使っていただくといった使い方が提案できると考え、今回出展した」と話す。
もう一方の著作権に関する動画は、学生が作詞作曲したオリジナル楽曲「著作権のうた」のミュージックビデオ(MV)だ。正体を隠してアーティスト活動をしている「めま」が歌い手の「めんみ」となり、著作権侵害の具体的な事例をリズミカルに歌い上げていく。著作者人格権や財産権の中に含まれる、さらに細かな権利についても1つ1つ名称を挙げて網羅した形になっている。
このMVは、今回のフェアが開催される2日前に公開したばかりだが、実は2023年度に卒業した学生が卒業制作でつくって公開した動画が元になっている。当初はバーチャルシンガー「初音ミク」を使ったボカロ曲だったが、同作のカバー作品として作り替え、「めま」の声優の歌声をあてている。企業がMVを自由に利用できるよう、ライセンス上の問題や必要な手続きが発生しないよう配慮した。
フェア期間中、ブースは盛況で、関心を持った来場者や他の出展企業のスタッフなどが立ち寄り、学生たちの説明に聞き入っていた。来訪者からは「多くの好意的な声をもらった」という。
同ゼミの学生たちは現在、著作権をテーマに新たなアニメ教材を制作中で、来年の1月に新作を公開する予定だ。
【YouTube動画】
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